かおり

かおり

 娘が男と別れたと聞いた。あんなに純真無垢なかおりを弄んだ男だ。ちょうどいい、財布の中も空っぽなことだし、脅していくらか巻き上げてやろう。
俺は方々探してついに、街でそいつを見つけた。
「おい、落とし前をつけてもらうぜ」
「何をいまさら、指の一本や二本……僕は全てを失ったんです!」
 俺よりすごい剣幕だ。別に指がほしいわけじゃない。
「何を言ってやがる」
「結婚詐欺ですよ。あなた彼女のお父さんなんですか。かおりは今どこにいるんですか?!」
 なんてこった。かおりがそんなことを? なにせあいつは昔の女が俺に知らせずに産んだ子供だ。父親のいない家庭で育って、さぞ苦労をしたのだろう。
 かおりを守ってやらなければ。俺は男に睨みを利かせた。
「なんでい、それならかおりを見つけ出して復讐しようって腹かよ?」
「ちがいます。お金や物なんてもうどうでもいいんです。僕にはただ、かおりが必要なんです」
 驚いた。こいつ心までかおりに奪われていやがる。娘は俺以上の悪党になってしまったというわけだ。
 若い身空で、俺は男が少し可哀想になってきた。
「しょうがないな、俺が電話してやろう」
 携帯電話を取り出して、かおりにかけたが、この電話番号は現在使われていませんということだ。番号を替えたのだろうか。
「おかしいな」
こうなると俺も困る。貸した金をどうやって返してもらえばいいのだろう。
「僕だって電話しましたよ。同じことになりました。ちょっと、あなた本当にかおりの父親なんですか?」
「そんなことを言われても、俺だって先週初めて会ったばかりだ」

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